岡見 義男先生 - フラワーコーディネーター森 由美子のホームページ

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岡見 義男先生(ラン栽培家、花卉装飾家)

 

【岡見 義男先生の履歴】

 

 明治21年東京に生まれる。40年芝正則中学卒。病気静養の後、医師の勧めにより園芸を志す。当時上級の園芸学校がなく、やむを得ず新宿御苑に奉職、43年(1910年)、宮内省より英国へ園芸事業調査のため出張を命ぜられ、一年間の見学と実地研究を行う。45年再度渡英し帝室キュー植物園に研究生として入学。大正2年(1913年)帰朝、再び新宿御苑に奉職、ラン栽培と宮中の花卉装飾を担当。


 昭和21年(1946年)、新宿御苑を退官し、河井道先生(恵泉女学園の創始者)に乞われて恵泉女学園に入り、園芸科の教授を勤める。38年(1963年)病気のため退職、同年11月逝去。主な著書は『蘭科植物の栽培』、『ラン-種類と培養』。

 

【私との絆】

 

 岡見先生からは、恵泉女学園の女子短期大学園芸科での2年間、英国式の気品あふれる花の装飾法と園芸のご指導を受け、草、木、石、自然一般に対する真摯な姿勢を学ばせていただきました。

 その頃の恵泉女子短期大学は東京郊外の小平にあり、校舎の周りには、岡見先生が中心になって作られた英国庭園や温室が点在し、畑や野原が広がっていました。


 私は新聞に掲載された学校紹介で恵泉女学園のことを知り、友人と一緒に学校見学に行きました。緑豊かなニレの並木を歩き、校舎に近づいていくと賛美歌が流れてきて、その頃珍しかった三色スミレ(パンジー)がふくよかに匂って咲いていました。そこには私の理想とする学園の姿がありました。
 

 家に戻り、恵泉女学園で園芸を学びたいという想いを、母に言いました。私の進路をいろいろ心配していた母は、恩師と仰ぐ大妻コタカ先生のところへ私を連れて行き相談しました。恵泉女学園創始者の河井道先生をよくご存じだった大妻先生は、教育者の立場から母と話し合ってくださり、その結果母も私の進学を許してくれました。

岡見 義男 先生(ラン栽培家、花卉装飾家)

 

 岡見先生の最初のアレンジメントの授業では、私たちはバケツを持たされ、校舎の外側に広がる野原で自由に花をつみとり、教室に用意された器のうちで好きなものを使って活けるよう指示されました。
 

 私の活けた花を見て、岡見先生が「あなたは生け花をしていますね」とおっしゃいました。そして「西洋のアレンジメントは、生け花とは違います。学んできたことはいったん忘れて、真っ白な気持ちで学んでください。日本の生け花のバランス感覚は素晴らしいですが、西洋のアレンジメントはまた違う挿し方をします。 それを習得したあとで、日本の生け花も学んでいくとよいですね。そのタイミングは私が教えます」と言ってくださいました。

 岡見先生は園芸科の基礎を作られた方ですが、園芸全般の手ほどきに加えて、2年目に花卉装飾を専攻してからは英国式装飾を丁寧に教えていただきました。


 先生は、学内の寮を住まいとし、授業の合間には庭に出て、花々を育てているお姿がいつも垣間見られ、身をもって園芸の大事さを教えてくださいました。講堂や食堂に花を飾り、行事のたびに生徒たちを指揮して大きな花のアレンジメントを活けるのも先生でした。

 先生はときどき私を部屋に招いてくださり、紅茶とお菓子をご一緒しながら、英国式の生活をあれこれ教えてくださいました。岡見家は、戦前から皇室に近しいお家柄だったそうですが、英国滞在も2度にわたり、英国式のマナーを身につけておられました。「男子たるものスーツの襟に花を挿し、靴は磨くべし」という先生の口癖も懐かしく思い出されます。

 2年目の4月、私の誕生日にスミレを小さなガラス器に活けて、カードと一緒に贈ってくださいました。そのガラス器はいまでも大事にしています。

 私の母はことあるごとに学園に私を訪ねてきましたが、岡見先生も母の来るのを楽しみにしてくださり、母の食事までご心配くださり、食堂の先生の席の隣りに母を座らせ雑談に花を咲かせている様子が思い浮かびます。

 心に残るのは「あるときは男性らしく、またあるときは女性らしく花を活けなさい」という先生の助言です。

 昭和37年、私が学園を卒業してまもなく先生はご病気のため恵泉女学園を退職されました。お見舞いにお伺いした折、枕元に私をお呼びになり「技術は学んでも らいました。あとは森さんの努力次第です。後輩のためにがんばってください」とおっしゃったことが、いつも心によみがえって来ます。

 翌38年4月、母が突然亡くなり、さらに同じ年の11月、療養を続けておられた岡見先生が逝去されました。語りつくせぬほどの思い出をいただいた岡見先生。私は、いまだに先生の背中に向かって、追いつけぬまでも歩き続けております。

岡見先生の新宿御苑ラン温室。大正天皇即位式のために大量に培養開花させたもの

岡見先生の新宿御苑ラン温室。
大正天皇即位式のために
大量に培養開花させたもの

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岡見先生と私
園芸科バラ園にて

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植物の手入れをされる先生

先生の作られたバラ園にて

先生の作られたバラ園にて

 

ランの食卓用盛り花

ランの食卓用盛り花

ランのブケー

ランのブケー

先生の作られた温室で多肉植物の寄せ植えを手に

先生の作られた温室で
多肉植物の寄せ植えを手に