サクラ - フラワーコーディネーター森 由美子のホームページ

花ごよみ

 

サクラ

 

 サクラはアジア東部からヒマラヤにかけて分布する樹木です。日本だけのものではありませんが、これだけ観賞花木としてサクラを愛し続けてきた国民は日本人をおいて他にないと思います。

 日本の花を代表するサクラ。古くはいまから1500年前、履中天皇(仁徳天皇の第1皇子)が舟遊びをした折、サクラの花びらが盃に落ちたという話が『日本書紀』に記録されています。もっともこの舟遊びは11月の行楽だと書かれていますので、季節はずれの冬桜だったようです。山の奥に満開の花をつけていたというこの折のサクラは、一体どういう種類のものだったのでしょうか。

 「花見」の始まりは奈良時代の貴族の行事だと言われていますが、この時代の花見の対象は梅でした。中国原産の梅が渡来したのとともに、梅の花をめでる中国人の風習が奈良朝の貴族たちの間に伝わったものです。


 「花見」がサクラに転じたのは、平安時代になってからのことです。奈良時代の『万葉集』では梅を詠んだ歌が多かったのに対して、平安時代の『古今和歌集』ではサクラの歌が主流となりました。

 

 『日本後紀』には、弘仁3年(812年)、京都神泉苑にて「花宴の節(せち)」が催されたと記述されていて、サクラの花見の記録としてはこれが最も古いものだとされています。

 サクラの種類は、ヤマザクラ、オオシマザクラ、ヒガンザクラ、カンヒザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、マメザクラ(フジザクラ)などの野生種の他、ソメイヨシノを始めとする改良種、園芸品種がたくさんあり、数え上げるのもきりがないほど多彩です。

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サクラ


 花弁は一重と八重に大別され、色合いも白、黄、紅色、緑と様々で、バラ科植物にふさわしく、ふくいくと香り豊かなサクラもあります。1月に濃いピンクの カンヒザクラ(ヒカンザクラ)が沖縄で開花するのを皮切りに、サクラ前線が日本列島を北上していきます。日本全国、サクラの名所もますます多く なってきましたので、春のひととき、日本人の伝統である「花見」を楽しむゆとりを持ちたいものです。

 かつて、私の実家の庭に一抱えもある八重のサクラがありました。シオガマ(塩竃)という種類だそうで、子供の頃はその樹の下で、花びらを使ってままごとをしたり、糸に通して首飾りを作ったりして遊んだことが、懐かしい思い出となっております。

  ある年(私が20歳を迎えたときだと記憶していますが)、そのサクラがそれまでにないほど美しく見事に豊かな花をつけ、母が、そろそろ由美子がお嫁さんに なる準備にと、サクラの花の塩漬けを作ってくれたことがありました。その翌年春、母が突然脳溢血で他界し、それとまったく時を同じくして、シオガマの樹が 急に元気を失い、さらに翌年には枯れてしまいました。

 その後、兄の結婚、私の結婚と続き、母の手作りの塩漬けで桜湯をお客様にお入れしたことは言うまでもありませんが、そのたびにやさしかった母と美しかったサクラ樹の思い出が重なりました。サクラに対する私の特別な思い入れは、そんな個人的な感傷からでもあります。

 小淵沢の店と住まいの庭には、8種類ほどのサクラ樹があり、4月から6月までつぎつぎに花を咲かせます。ちなみに周辺にはヤマザクラが多く、標高1,000メートルの高原だけに、例年5月上旬が最も美しい季節となります。ぜひお出掛けください。

 

小淵沢の店の裏手にあるヤマザクラも、
連休の前後に見事な花を咲かせます。
サクラ