花嫁の木、マートル(ギンバイカ) - フラワーコーディネーター森 由美子のホームページ

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花嫁の木、マートル(ギンバイカ)

 

我が家のすぐ近くを環七通り(環状7号線)が南北に走っています。かつてこの環七は排気ガス公害がひどく、沿道の植物はガソリンまみれになり息も絶え絶えの悲惨な状況でした。でも、15年ほど前から始まった都のディーゼル車NO作戦のおかげで、ガソリン汚染が激減し、いまでは見違えるように草木がよみがえっています。

 

最寄りの、井の頭線新代田駅へ向かう環七沿いには、スズカケ、サザンカ、ツバキ、ツツジ、ハナズオウ、ムクゲ、キンモクセイ、イボタノキなどの街路樹や遮蔽植栽がよく育っていて、緑や花々の彩りが四季折々に私たちをなごませてくれています。

 

この季節、環七ウォーキングの楽しみといえば、マートルの白い花でしょう。いつも交通量の多い通りですが、歩道のふちに何株ものマートルの木が育っていて、照りつける初夏の日差しの中でかわいい白い5弁の花を咲かせています。マートルは、和名を「ギンバイカ(銀梅花)」という、地中海沿岸原産の常緑の低木です。昔からハーブとして使われ、消毒や鎮静の効用もある植物です。花にも葉にも芳香があるのですが、足早に歩く人々は、ほとんどこの花の美しさにも香りにも気が付かないままに通り過ぎているようです。

 

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環七沿いに咲くマートル    長いおしべが花の可憐さをひきたてています。(撮影 2014.6.17)

 

マートルは、古代ギリシャの時代から愛の女神ビーナスに捧げる神木であり、愛情の象徴とされ、結婚式には欠かせない植物となりました。可憐な白い花とつややかで美しい葉が、花嫁さんのブーケや髪飾りに使われたことから、「祝いの木」という呼び方もできました。この風習はギリシャからドイツに伝わり、さらにイギリスやその他のヨーロッパ諸国へひろがっていったようです。

 

  

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マートルの枝葉で作った花嫁の冠

 

 マートルというと思いだされるのは、20年ほど前、北欧のクリスマスめぐりをした折に訪れたストックホルムの名所、スカンセンでのひとつの出合いです。このスカンセンは、広大な敷地に、スウェーデン全土から移築された古い家屋や農園が点在している野外博物館ですが、クリスマスシーズンでしたので、各地のクリスマ スの行事を再現した飾り付やテーブルセッティングなどが展示されていて、とても興味深く見て回りました。

 

 何やらクリスマスの雰囲気がただよう1軒の民家に入りました。冬の厳しい寒さに耐えるためでしょう、天井が低く窓が小さな、こじんまりとした可愛らしい家でしたが、いくつもの窓辺に緑の葉をしげらせたマートルの植木鉢が置かれていました。民族衣装を着た案内人にお尋ねしたところ、女の子が生まれると マートルを植える習わしがあり、夏場は外に出し、冬は室内に入れて大切に育て上げて、その子が花嫁さんになるときに、育てたマートルの枝葉で髪飾りを作るのですよと教えてくれました。

 

  日本でも昔は、女の子が生まれると桐の苗木を植え、その子が花嫁になるときに、成長した桐の木で箪笥を作って持たせてやるという風習があったものですが、国は異なれど親の思いに共通するものを感じました。

 

ストックホルムの市街に帰り、本屋さんに立ち寄ったときに、スウェーデン伝統の髪飾りの作り方を紹介した本が偶然目にとまり、買い求めました。あの頃、スウェーデンの書籍はたいそう値段が高くて驚いたことも懐かしく思い出されます。

 

日本に戻り、マートルを我が家の庭にも植えてみました。その2代目がいまも元気に育っており、香りのよい花と枝葉をときおりアレンジメントに使って、重宝しております。一昨日アップしました「季節のお花のアレンジメント(第2回)」にも、ちょっぴりですが、我が家のマートルを登場させています。

 

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ストックホルムで求めたウェディングのための髪飾りの本

上に載っているのは、オレンジの花(子孫繁栄のシンボル)の髪飾り[クロスフラワー/制作・横山敏江さん