2016年おひなまつりと講習会を実施しました。 - フラワーコーディネーター森 由美子のホームページ

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2016年 おひなまつりと特別講習会を実施しました。

 

春は弥生、おひな様の季節です。「弥生」は本来旧暦3月のことです。今の暦では3月末もしくは4月初めに当たります。弥生は「草木がいよいよ生い茂る月」という意味だそうですから、やはり旧暦3月にふさわしい呼び名でしょう。

 

現在の暦(新暦)では3月3日が「ひな祭り」とされていますので、「おひな様はもう仕舞ってしまった」という方々が多いでしょうが、「ひな祭り」はもともと旧暦3月3日、新暦では4月初めに祝われていた伝統行事です。

 

     ひな祭りにはモモの花が欠かせないため、「桃の節句」とも呼ばれていますが、モモの花が満開となり、春の息吹がいよいよ高まるのはこれからのことです。旧暦の方が、日本の季節感に合っているといえるでしょう。

 

 私の仕事の都合もありましたので、新暦のひな祭りよりちょっと遅めの3月5日から12日まで、世田谷の森 由美子花のサロンでオープンハウス「おひなまつり2016」を開催いたしました。

 

 久しぶりに2階の和室もオープンし、七段飾りのおひな様を初め、各地各様のおひな様やおひなまつりのお道具、それに可愛い犬張子なども飾ってお客様をお迎えしました。犬張子は、江戸時代に誕生した、子供たちの健やかな成長を願うお守り犬です。今年は、いせ辰の大小の犬張子に、山形生まれのひょうきんな子犬の張り子も仲間入りしました。 

                                                                                                                            

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    44年前に娘の初節句のために埼玉・岩槻市で求めた我が家の段飾り。左右に犬張子が控えています。

 

 

 床の間には、真多呂の立ち雛、京都・丸平の稚児人形など、違い棚には私のお気に入りのツバキ木地人形、古い豆雛の段飾りや各地の土雛などを飾りました。おひな様の脇には、サクラやツバキなどの春の花々を小さな花器に活けて飾りました。

 

 ツバキの花は、自宅の庭に咲いた白玉、曙、侘助、キンギョ葉ツバキ、糊コボシ、極小輪ツバキ(ルチェンシス)などですが、いずれも10 cm足らずの苗から長年育てたものです。いまでは私の背丈をとうに超えて、早春から次々に美しい花々を咲かせてくれます。  

 

 我が家から徒歩15分ほどの実家の庭には、祖父が植えた樹齢90年を越えるツバキが何本かあります。長い年月大切に守られ育てられてきた、見るからに風格を感じさせるツバキの大樹です。今年も立派な花を咲かせましたので、幾枝かをいただいてきて、これもおひな様の展示に添えました。      

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床の間にはおひな様の掛け軸、手前にはおひな菓子など、違い棚の前面には吊るしびなも飾りました。

 

 

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1階のサロンには、中村金鈴さんの豆雛、貝びな、

手まり、ミニチュアの道具セットなど、女の子の好きなものがいっぱい。

 

サロンの壁際には、全国の地方色豊かなひな人形をたくさん

展示いたしました。

 

 

 

オープンハウスの期間中、おひな様とご一緒に皆様方をお迎えしました。こういう催しに関心を持っておいでいただく方々と、なごやかなひとときを過ごせたことはとても嬉しく、私に元気を与えてくれました。

 

3月12日には、お花のクラス(特別講習会)をいたしました。サクラとツバキを中心に使って、飾る場所や花器はめいめいが選んで、作品に仕上げていただくことにしました。

 

講習会に先立って、使用する花材を求めに、ある朝早く花市場に出かけました。

 

 仲卸のお店が一列に並ぶ市場の中には、季節の花々や枝物がところ狭しと置かれて売られていました。

 

 サクラとツバキに合わせる花を何にしようか、段取りと仕上がり具合を思い描きながら、人ごみの中を進んでいきましたが、中ほどのお店で目にとまったのが、アフリカ産の「パリジェンヌ」という名のバラでした。

 

 奈良の二月堂で、お水取りの行事に使われるツバキの造花の原型が「糊コボシ」という品種ですが、その赤白模様にとてもよく似たバラでした。ツバキと組み合わせてみたら楽しいのではないかと、即買うことにしました。                                

 葉物は自宅の庭にある枝葉で事足りますので、市場ではそれに合わせられる花々を買い揃えました。講習会の当日、生徒さんたちが作ったアレンジメントをご紹介しましょう。           

    

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  パラの「パリジェンヌ」とツバキの「糊コボシ」。黄色いオシベがあるのがツバキ。手前左側に極小の花を咲かせるルチェンシスも入れてあります。

 

 

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茨田政子さんの作品   宮子敬子さんの作品    横山敏江さんの作品  

 

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波多野容子さんの作品   飯田真理さんの作品   岩本佳子さんの作品  

 

 

今回のお花のクラスでは、私の大好きな花のひとつであるツバキをたくさん使いました。このツバキについて少しお話いたしたいと思います。

 

江戸時代の初めの寛政年間、その当時ガーデニングについては世界の先進国だった日本で、空前のツバキ・ブームが起こったそうです。珍しい品種が次々と生み出され、ツバキに関する書物や図譜が数多く出版されました。このツバキ・ブームは、皇族や公家、大名や知識人など、上流階級での一大ブームでした。二代将軍秀忠も、三大将軍家光も、無類のツバキ好きだったと伝えられています。

 

その頃世に出たツバキの図譜のなかで、『百椿図』と題された図譜は実はいくつかあったそうですが、そのほとんどは残念なことに現存していないようです。我々が見ることのできるただひとつの『百椿図』は、丹波篠山藩主、松平忠国が作らせたもので、原本は東京の根津美術館が所蔵しています。

 

この24 mにもおよぶ長い絵巻には、狩野山楽の筆になる100種類以上ものツバキが精妙に描かれ、当時の文化人たちの和歌や俳句や漢詩が添えられています。

 

 

 私がこの『百椿図』に初めて接したのは、2003年に日本橋の三越本店で開催された『安達瞳子 世界の名花・椿物語展』でのことでした。その折の図譜も根津美術館から貸し出されていたものだったと、後になって知りました。

 

 本年(2016年)2月、根津美術館のコレクション展『松竹梅ー新年を寿ぐ吉祥のデザイン』に出かけましたところ、思いがけずも『百椿図』が別室で公開されていて、ふたたびこの図譜に出会う幸運に恵まれました。                                  

 色鮮やかに描かれた、百余のツバキがそれぞれに醸し出す美しさを目の当たりにして、感動を新たにしました。

   

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    根津美術館発行の『百椿図』のカタログ

 

 日本を代表する花のひとつであるツバキは、いまや世界中に熱心な愛好者がいて、各国の植物園などでも大切に育てられています。このあたりのことについては、「花エッセイ-ツバキ」のページをご参照ください。                                     Hina16 13 m
    上のカタログに収録されている絵巻の一部。

 

 

私がとくにツバキに心ひかれるのは、生まれ育った世田谷の実家の庭に、美しいツバキの木がたくさん植えられていて、幼児期から少女期の思い出につながり、また思い出を彩っているからです。いまはすっかり大樹となった木々は、この冬も昔に変わらず、深みのある色合いの花々を枝いっぱいに咲かせています。