キノコの秋です。(キノコ三題ばなし) - フラワーコーディネーター森 由美子のホームページ

花ごよみ

 

Home新着情報キノコの秋です。(キノコ三題ばなし)

キノコの秋です。(キノコ三題ばなし)

 今年の夏は、記録的な高温に豪雨という異常気象が続きました。山梨・小淵沢の植物たちも、季節外れに咲いたり、驚くほど長期間咲き続けたりするものがありました。

 

  可哀そうに、いつもと違う天候のために、あれほど精密な体内時計が少し狂わされたのではないでしょうか?

 

 雨が多かったせいか、夏の終わりごろから、庭のあちこちにいままでになくたくさんのキノコがあらわれました。

 

 玄関わきの駐車場には、カラカサタケが3本も出現しました。なぜか几帳面に毎週1本ずつ、1mずつの間隔で顔を出し、みるみるうちに背丈を伸ばしました。カラカサタケは、大きいものは50センチ以上になるものもあるという大型のキノコです。

 

 カサの形は、最初は球形ですが、やがて平たくなり、その名のようにカラカサの形になりました。

     

mushroom 1 m

    最初に現れたカラカサタケ。カサは白っぽく丸い形です。

 

    右の写真は、カサがカラカサ状になって成熟したものですが、その脇に知人が手作りしたベニテングタケの置物をならべてみました。置物は高さ10センチ足らずのものですから、カラカサタケはすでに20センチ以上に育っていることが分かります。

 

 ベニテングタケは、日本でも岩手県や長野県の高原に自生していますが、ヨーロッパ、ロシア、北アメリカなどの高緯度の寒冷な土地に広く分布しています。テングタケの仲間の中では、外見が派手な割にはあまり毒性は強くないそうですが、たくさん食べると腹痛や下痢の症状を起こすという、要注意のキノコです。

 

 でも見ての通り、赤色のカサに白い斑点を散らした姿はなんとも可愛らしく、世界中の絵本や童話に登場する人気のキャラクターであることも不思議ではありません。とくに、北ヨーロッパでは、「幸運を呼ぶキノコ」として人気があります。                         

     mushroom 2 m
     任天堂のマリオシリーズに出てくる赤いカサと白い斑点を持つキノコ。このベニテングタケがモデルではないでしょうか?
     

 ある知人が、山梨県のある山で、赤松やシラカバの茂る林の中にテングタケが円陣を組んで生えているのを見たと言いました。聞いた途端、絵本の中の小人たちの集会みたいに、キノコが輪になって立ち並んでいる光景が脳裏に浮かびました。私もいつか見てみたいと思っていますが、まだ願いはかないません。

 

 こういうキノコの円陣は、実はそれほど珍しいものではなく、英語にも「フェアリー・リング」、つまり「妖精の輪」という呼び名があります。妖精たちというと、月の明るい夜、林の中で妖精たちが円をなして踊っている…… そんな、夢の一場面のようなシーンも心に浮かんできます。

                                                               

 

   

 テングタケといえば、1993年の真冬に行った北国フィンランドでの思い出もあります。

 

 当時、夫と私は、冬ともなれば各国のクリスマスシーンを見学に出かけておりました。クリスマスの風習は、どの国にも古来から伝わる行事のひとつである「冬至祭」をベースにして、あとから伝わったクリスマスの行事を合体させたものですので、国により民族によりさまざまな祝い方や装飾方法が見られます。

 

 この年は、私たちはフィンランド北部のロヴァニエミという町に行きました。この町のすぐ北に北極圏の始まりを示す「北極線」が走っていて、その北極線をまたいで「サンタクロース村」があります。

  mushroom 3 m
    私たちもサンタクロースの部屋を表敬訪問しました。
     

 ロヴァニエミは第二次世界大戦で、完全に破壊されたそうですが、1955年、この町の復興を視察するために、アメリカのF. ルーズベルト大統領の未亡人、エレノアさんがやってきました。

 

 エレノアさんは、1945年に大統領が世を去った後、アメリカの国連代表をつとめ、世界人権宣言を起草し、人種差別と女性の地位向上に大きな功績を残した方で、国際的な知名度を持っていました。

                              

 ロヴァニエミはエレノアさんの来訪を歓迎し、急きょ宿舎として小さなコテッジを建てました。「ルーズベルト・コテッジ」と呼ばれるこの小屋はいまでもサンタクロース村に残されています。

 

 エレノアさんご自身が、北極圏と子供に夢をもたらすサンタクロースに関心をもっていたことも、サンタクロース村の建設に力を与えたということです。

  mushroom 4 m
   サンタクロース村のルーズベルト・コテッジ
     

 さて、ロヴァニエミに着いたときのことですが、ホテルにチェックインしてすぐ、私たちはロビーの掲示板にとめてあった日本語のチラシに気づきました。喜納政和さんという方が「この地で唯一の日本人です。ガイドをします」と書かれたものでした。早速お電話をして、滞在中のガイドをお願いしました。

 

 喜納さんには、サンタクロース村にもご一緒していただいたのですが、前の年に市内にオープンしたばかりのアクティクム博物館にも連れて行ってもらいました。

 

 フィンランド北部の自然や文化を知るための興味深い展示がありました。その一角に見かけたのが、干したテングタケ、皿、鉢、その他の道具類。喜納さんにお聞きすると、昔呪術師が、テングタケを食べ、幻覚症状に入りながら、占いをおこなったのだということでした。なにやら一見して恐ろし気な展示として印象に残っています。

  mushroom 5 m
         猛毒キノコのテングタケ
     

 

 キノコについて、思いつくままに綴ってきましたが、ここで私のキノコ・コレクションの一部をお見せしたいと思います。キノコをモチーフにしたグッズは、世界中にあり小さくて手ごろなお土産になります。

 

 右はフィンランドを始めとする世界各地で手に入れたものですが、やはりベニテングタケ・グッズがだんぜん多いですね。                            

  

mushroom 6 m
    手元にあったキノコ・グッズを並べてみました。

 

 一年の三分の一を山梨県で過ごす私としては、もうひとつ忘れてはならないのが、武田信玄公ゆかりの武田神社(甲府市)の天井画です。拝殿の左となりに平成12年に新設された菱和殿。その天井には、渡辺隆次画伯の筆になる120枚の天井画があり、山梨県の草木禽獣とキノコが鮮やかに描かれています。

 

 そのうちの34枚が、山国の甲斐の秋を彩るキノコの絵です。『きのこの絵本』(ちくま文庫)に、キノコの不思議さと魅力をスケッチとエッセイで綴っている渡辺画伯の力作だけに、力強い描写のキノコの数々を、皆さまにもぜひ一度生でご覧いただきたいものです。                                  

  mushroom 7 m
    武田神社の天井画を飾る渡辺画伯の天井画の一部