思い出のヨーロッパ・クリスマス市
皆さまお元気でしょうか?
不安な情勢が続いておりますね。いまや世界がひとつの共同体になって、コロナと戦っている感じです。 いわば全人類 vs. コロナウイルスとの闘いです。いまの私たちは、運命を共にする地球連合チームといってよいでしょう。遠い国々のことであっても、同じウイルスに苦しむ人たちのニュースが伝わるたびに、ひと事とは思えず心を痛めております。 例年でしたら、世田谷の花のサロンでクリスマス・オープンハウスを開き、おいでくださる皆さまと楽しいひと時をご一緒できたのですが、今年はそれも叶いません。
海外旅行も夢のまた夢ですが、この季節になると、海外で体験したたくさんのクリスマスシーンを思い出します。自粛生活のいとまに、皆さまに私の思い出話をお聞きいただきたいと存じます。 |
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ドイツで出合ったクリスマス市
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クリスマス市は、ふつう「アドベント」(キリストの降誕を待ち望む期間)の約4週間開かれます。いまではいろいろな国で行われていますが、中世期に、ドイツで「冬の市」として催されたのが最初だと言われています。
1988年、私は山梨県小淵沢に、おしゃれな生活小物を取りそろえた店「フラワーカレンダー」をオープンしました。八ヶ岳南麓の、標高ちょうど1000mの地にある赤松林に囲まれた一角でした。
当時、この店のはす向かいに(いまは少し離れたところに移転しましたが)絵本図書館「えほん村」がありました。そのオーナーの松村ご夫妻とは、私が小淵沢に立ち寄った初日に出会い、親しくなりました。
ドイツで絵本作家デビューをされた奥様の雅子さんから、ドイツのクリスマス市のことをお聞きしました。教会のまわりに常緑樹で飾られた可愛い店が立ち並び、ドイツの手作りのクリスマスオーナメントがあふれるほど並べられている……。そんな話を聞いてはたまりません。
翌年の1989年12月、家族3人でドイツに出かけました。まず向かったのは南ドイツのミュンヘン。そこからクリスマス市で知られる町や村へ足を延ばすというプランでした。
ドイツに着いて早々に、新聞でミュンヘン西方の「黒い森」一帯の針葉樹が酸性雨で枯れてしまった、という記事を読みました。クリスマスに欠かせないモミなどの針葉樹が大被害を受けたというニュースは、私にはショックでした。新聞にはさらにもう一つショッキングなニュースが載っていました。「ドイツの本物のクリスマスオーナメントを売る店が少なくなった」というのです。
これはいまから30年以上も前の話ですが、すでに格安ではあるが、少し粗雑な外国製品がヨーロッパのクリスマス市にも出回っていたことを物語っています。その後、ヨーロッパ各地のクリスマス市を回るうちに実感できたことは、どの国でも輸入された安価なオーナメントが増えていることです。でもその反面、少量であっても、土地の人たちが丁寧に手作りした伝統的なオーナメントも残っていることが分かりました。じっくり見比べる根気と、見分ける眼力さえあれば、本物を見つけることもできるのだという自信もつきました。 |