思い出のヨーロッパ・クリスマス市 思い出すことごと (8) - フラワーコーディネーター森 由美子のホームページ

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思い出のヨーロッパ・クリスマス市

 

 皆さまお元気でしょうか?

 

 不安な情勢が続いておりますね。いまや世界がひとつの共同体になって、コロナと戦っている感じです。

 いわば全人類 vs. コロナウイルスとの闘いです。いまの私たちは、運命を共にする地球連合チームといってよいでしょう。遠い国々のことであっても、同じウイルスに苦しむ人たちのニュースが伝わるたびに、ひと事とは思えず心を痛めております。         

                    

 例年でしたら、世田谷の花のサロンでクリスマス・オープンハウスを開き、おいでくださる皆さまと楽しいひと時をご一緒できたのですが、今年はそれも叶いません。

 

 海外旅行も夢のまた夢ですが、この季節になると、海外で体験したたくさんのクリスマスシーンを思い出します。自粛生活のいとまに、皆さまに私の思い出話をお聞きいただきたいと存じます。

 

 

   

 ドイツで出合ったクリスマス市 

 

 クリスマス市は、ふつう「アドベント」(キリストの降誕を待ち望む期間)の約4週間開かれます。いまではいろいろな国で行われていますが、中世期に、ドイツで「冬の市」として催されたのが最初だと言われています。

 

 1988年、私は山梨県小淵沢に、おしゃれな生活小物を取りそろえた店「フラワーカレンダー」をオープンしました。八ヶ岳南麓の、標高ちょうど1000mの地にある赤松林に囲まれた一角でした。

 

 当時、この店のはす向かいに(いまは少し離れたところに移転しましたが)絵本図書館「えほん村」がありました。そのオーナーの松村ご夫妻とは、私が小淵沢に立ち寄った初日に出会い、親しくなりました。

 

 ドイツで絵本作家デビューをされた奥様の雅子さんから、ドイツのクリスマス市のことをお聞きしました。教会のまわりに常緑樹で飾られた可愛い店が立ち並び、ドイツの手作りのクリスマスオーナメントがあふれるほど並べられている……。そんな話を聞いてはたまりません。

 

 翌年の1989年12月、家族3人でドイツに出かけました。まず向かったのは南ドイツのミュンヘン。そこからクリスマス市で知られる町や村へ足を延ばすというプランでした。

 

 ドイツに着いて早々に、新聞でミュンヘン西方の「黒い森」一帯の針葉樹が酸性雨で枯れてしまった、という記事を読みました。クリスマスに欠かせないモミなどの針葉樹が大被害を受けたというニュースは、私にはショックでした。新聞にはさらにもう一つショッキングなニュースが載っていました。「ドイツの本物のクリスマスオーナメントを売る店が少なくなった」というのです。

 

 これはいまから30年以上も前の話ですが、すでに格安ではあるが、少し粗雑な外国製品がヨーロッパのクリスマス市にも出回っていたことを物語っています。その後、ヨーロッパ各地のクリスマス市を回るうちに実感できたことは、どの国でも輸入された安価なオーナメントが増えていることです。でもその反面、少量であっても、土地の人たちが丁寧に手作りした伝統的なオーナメントも残っていることが分かりました。じっくり見比べる根気と、見分ける眼力さえあれば、本物を見つけることもできるのだという自信もつきました。

       

 到着した日には、ミュンヘンのクリスマス市が開かれている市庁舎前のマリエン広場に行きました。初めて見る、クリスマス市発祥の国のクリスマス市でした。

 

 大都市だけに店(屋台)の数も多く、クリスマス用品を求める市民たちでにぎわっていました。品数の多さは目をみはるほどでしたが、蜜ろうキャンドルのほかは、特に伝統的な手仕事は見当たりませんでした。

 

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ミュンヘンのクリスマス市。堂々とした市庁舎に面した広場で開かれていました。

 

アウグスブルクで麦わら細工と出合った!

 

 

   

 翌日は、列車に乗ってミュンヘンの西北70kmにあるアウグスブルクの町へ行きました。

 

 アウグスブルクには、松村さんのお友達である日本人のご婦人が住んでおられて、我々を迎えてくださり、クリスマス市にご案内いただきました。ミュンヘンのそれよりは小規模でしたが、中央広場の周りの建物がライトアップされていて、美しく素敵な眺めの中に可愛い店が立ち並んでいました。

 

 何よりも感激したのは、麦わら細工のクリスマスオーナメントがたくさん売られていたことです。近隣の農家の方々が冬の手仕事で作り上げた様々な作品を、目移りしながら選んだことを覚えています。

 

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アウグスブルクのクリスマス市ではたくさんの麦わら細工に出合いました。

 

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 アウグスブルクで買い求めた麦わら細工のツリートップ。クリスマスツリーの頭にのせるものです。麦わらの気品ある輝きが得も言われぬ美しさです。     ポピーの実の前面を切り開き、麦わらの星と天使を配し、生誕シーンを作り出しています。実の中をのぞくと幼子イエスが眠っています。

 

中央ヨーロッパのクリスマス市

 

 

   

 1999年には、中央ヨーロッパのチェコ、ハンガリー、オーストリアのクリスマス市めぐりに出かけました。いずれも、丁寧な細工が施された素晴らしい工芸品に定評のある国々です。

 

 旅に出かけるきっかけは、東京で春夏に開かれるギフトショーで、チェコ製の木のクリスマスオーナメントを見つけ、出展されていたチェコ人のオーナーさんと知り合ったことです。

 

 その方から、チェコでもとても美しいクリスマス市が開かれていることをお聞きしました。彼自身もプラハに工房を持ち、クリスマスの装飾品を作っているそうで、ぜひその工房においでくださいとのお誘いをいただきました。

       

 チェコの首都プラハに着いた私たちは、まず東京でお会いした工房のオーナーさんをお訪ねしました。プラハ観光の名所でもあるカレル橋のたもとに彼の工房がありました。その界隈にはマリオネット人形の工房もいくつかあるそうで、あちこちの店の飾り窓には古い人形が飾られていました。

 

 彼の工房で、たくさんのクリスマス装飾品や2cmにも満たないミニチュア家具などを見せてもらいました。ほとんどは白木づくりのもので、素朴ながら気品のあるものでした。彼の話では、他の職人たちに作ってもらっているミニチュア家具などは、年々作り手が減って、廃番にせざるを得ないものが続出しているそうです。

 

 プラハの市でも、いろいろな麦わら細工を見つけました。市内の工芸品展などにも掘り出し物がたくさんありました。

  

 

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プラハ・旧市街広場のクリスマス市。東京で知り合った工房のオーナーさん(右手前)にご案内いただきました。

       

 次に訪れたハンガリーは、昔から主人が大好きな国のひとつでした。なんでも若いころ、ソ連の勢力下にあった東ヨーロッパの国々をめぐる旅をしたそうで、マジャール人の国ハンガリーではいくつか感激の体験があったそうです。

 

 マジャール人ははるか東方の地から移り住んだ民族で、アジアの血をひくと言われ、黒い目、黒い髪で中背の人たちが多く、人情のこまやかさも日本人に似ているようです。主人の旅の大半は、スラブ人の国で、ハンガリーに着いたときはほっとした、そうです。

 

 これもアジアの血をひくためかと思わせるのは、ハンガリー人の手先の器用さです。刺しゅうや陶磁器など、さまざまな逸品があることは私もかねがね承知していました。

 

 ハンガリーの首都ブダペストのペスト地区で開かれていたクリスマス市も素晴らしいものでした。私たちが最初に行った折には、それほど店数は多くはないものの、手作りの品々が驚くほど多かったことに感激しました。

 

 なかでも、右の写真の店に並んだ品物は、いかにも農家の人たちの冬の手仕事“感”いっぱいのものばかりでした。売っていたのも見るからに純朴そうなおばさんでした。お聞きしてみると、やはり近郊の村から自分たちの手作り品を運んできたそうです。

 

 この方には、数年後再訪したクリスマス市でもお会いしました。顔を見合わせたとたん、アッという顔をしてにこっと笑ってくれました。前回、いろいろなものに興味を示した変わり者の日本人を覚えていてくれたようです。

 

 

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赤いほっぺの農家のおばさんが、自分たちの手作りの麦わら細工などを売っていました。

 

 

クリスマスグッズに見るお国柄

 

     

  クリスマスの歴史を調べてみると、そこにはキリスト教会の苦肉の策があることが分かります。なぜなら、イエス・キリストが12月25日に生まれたという証拠が何もないからです。

 

 実は、異教徒たちにキリスト教になじませるための妥協策として、クリスマスに冬至祭を組み込んだのがそもそもの始まりだったようです。さまざまな民族が、図らずも同じ祭りを祝っていました。それが冬から春への折り返し点であり、太陽の復活を意味する冬至の祭りだったのです。

 

 この30年あまり、世界各地のクリスマス装飾を見て回ってきましたが、土地や民族により、クリスマスの祝い方も飾り方も千差万別。その多様さには驚かされます。

 

 キリスト教の伝来以前にさかのぼる、太陽神に新しい年の願いと家族の幸せを祈る冬至祭。これは世界中の民族に共通の行事だったのです。その冬至祭に起源するからこそ、各地にそれぞれの伝統のクリスマス装飾があるということです。

 

 コロナ化が収束したら、ぜひ世界のクリスマス市にもお出かけください。おいでになる方は、おなじみのクリスマスのモチーフだけではなく、ぜひその土地に固有の伝統的な装飾に出合うことを楽しみにしてください。祖先からえいえいと受け継いできた、その土地ならではの装飾品でしたら、おそらくは輸入品ではなく、地元の人たちの貴重な手作り品だと思うからです。

   

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ユールボック(クリスマスの山羊)は、スウェーデン特有のクリスマス装飾です。北ヨーロッパの諸国では、「森の妖精」も

クリスマスグッズの仲間入りをします。